発達障害について
発達障害は、現在医療機関で広く使われている診断基準(DSM-5)では、自閉スペクトラ ム障害(ASD)、注意欠陥・多動性障害(AD/HD)、局限性学習障害(LD)、コミュニケー ション障害、運動障害、知的能力障害の主に6 つに分類されています。一般に発達障害と言う場合には、この中の自閉スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥・多動性障害(AD/HD)、 局限性学習障害(LD)の 3 つをさします。また、発達障害に悩む人には、 これらの一つの特徴だけでなく、ASD と AD/HD、AD/HD と LD など、いつかの特徴を 持つ人も多いため、心理検査などを通してその特徴をよく理解していくことが大切です。今回は、この主な3つの発達障害について、主要な点をご説明していきたいと思います。
【自閉スペクトラム障害(ASD)】A.社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な問題と、B.行動、 興味、または活動の限定された反復的な様式を持つことを主な特徴とし、生誕後の発達早期 からこの特徴が見られることが診断基準とされています(DSM-5による)。B には、感覚 刺激に対する過敏さまたは鈍感さといった基準もあり、この特徴は最近ではテレビ番組などでもよく取り上げられています。子どもの頃に診断を受けることもありますが、人の気持ちや周囲の状況がよく分からない、振る舞いを上司によく注意されるといった悩みを主訴に病院を受診され、大人になってから診断を受ける方もおられます。上のAのみの特徴を持つアスペルガー障害も有名です。同じようにASDと一言で言っても、その特徴や生活で感じる困難さは個人によって様々に異なります。
【注意欠陥・多動性障害(AD/HD)】不注意な間違いをする、注意を持続することができないといった『不注意さ』と、そわそわ と落ち着きがない、じっとしていられないといった『多動性』や『衝動性』を特徴とし、これらが 12 歳以前から見られていることによって診断されます(DSM-5による)。しかし、大人になると多動性や衝動性は落ち着きをみせるため、不注意さが主な特徴となっていきます。大人になってから仕事上でミスが多いことに悩まれたり、また、本人は真剣に取り組んでいるつもりでも、周囲から話を聞いていないなど態度を指摘されたりし、うつ症状などを訴えて病院を受診されるケースもあります。
【局限性学習障害(LD)】文字を読むことや書くことが困難、また計算が困難など、他の能力には大きな問題はないにも関わらず、ある特定の知的活動のみが極端に困難となっている状態を言います。学習に大きな問題が生じる場合には、小学生の頃に先生や親が気づき、学習支援などを受けておられることもあります。診断を受けるほど目立つものではない場合でも、特定の知的活動を苦手としていることがあります。