臨床心理士と可愛い絵本⑦
臨床心理士と可愛い絵本⑥
【 ぞうのたまごのたまごやき 】
『臨床心理士と可愛い絵本』と題して、
シリーズでお送りします(更新は気ままです)。
幼い頃に好きだった絵本を
大人になった今あらためて手にした時、
そこには深くて広くて大きなメッセージがあるように感じました。
“大人になったから” だけでなく
“臨床心理士として” の視点も増えた私が、
一冊の可愛い絵本に想いを寄せて、語ります。
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第7回目にご紹介するのは
【 ぞうのたまごのたまごやき 】
(寺村輝夫:作 長新太:画 福音館書店)
〈あらすじ〉
王さまのうちに、まるまるふとった、たまごのように可愛らしい王子さまが生まれました。
王さまは喜んで、国中の人を集めてお祝いをしようといいます。
ご馳走は、たまごやき。あまくって、ふーわりふくれた、あったかい、たまごやき。
でも国中には何千人もいるのだから、皆に振る舞うにはたまごが足りません。
王さまは「ぞうのたまごなら大きい」と、ぞうのたまごのたまごやきを作ることを命令しました。
さぁ、家来たちは、大忙し。
大きな大きなフライパンづくり。
大きな大きなかまどづくり。
そしてもちろん、ぞうのたまご探し。
準備は着々と進みますが、
どこを探してもぞうのたまごは見つかりません。
疲れ果てた卵探し大臣は、
つい眠りこけてしまい…夢をみました。
「ぞうはたまごをうまないよ」
…夢の中で、ある子どもがクスッと笑って歌うのです。
ぞうはたまごをうみません。
大きなフライパンもかまども、皆むだになってしまいました。
あっははははは・・・・・・。
連れ帰ったぞうはとっても可愛らしく、
大きくなった王子さまとすっかり仲良しになりました。
=====
この可愛い絵本を読んで、
臨床心理士Tは、こんなことを考えました。
(1)価値はひとつじゃない
象は「身体が大きいから卵も大きいに違いない」と思い込まれて、
そもそも「卵を生まない」ことに気づかれず、
象の卵を探すため大勢が大仕事をします。
結局、卵を生まないと気づいた時には、
「ここまでの苦労が全部無駄じゃないか!!」となりますが、
「可愛くて、王子さまと仲良しになれる」という素敵な価値がありました。
期待される能力がなかったとしても、
絶対に他の能力・魅力・才能・持ち味があるはず!
あなたは相手をちゃんと見てますか?
相手のことを本当に知った上で判断していますか?
「大きい卵がほしい」という自分の強い思いだけで突っ走ると、
卵をうまない相手にまで卵を生むよう強要することになってしまいます。
「部下が思い通りの成果を出さない」
「パートナーはいつも期待通りのことをしてくれない」
など、他者に対して苛立ってしまう理由の一つに「あなたが相手をちゃんとみてないから」という点もあるかもしれません。
(2)笑って流せる逞しさがいい
象はたまごをうまないことに気づいたページの最後は、
「あっははははは・・・・・・。」
めっちゃウケるや〜ん!と大爆笑している笑い方ではなさそうな、
ちょっと棒読み感もあるかな?ちょっと苦笑いしてるかな?困り顔に笑いが混ざった感じかな?
と想像が膨らみます。
ここまでお金も時間もたくさんかけて、全部無駄になったと思うとすごく喪失感が大きいし、
ここまで象にこだわったのにそもそも間違いだったなんて恥ずかしいし、
でもぜんぶ、
あはははは…!
王子さまが象と仲良くなれたなら、それで幸せ!
なんと逞しい。
これは「強がっている」ではなく、「逞しい」という表現がぴったりのように思います。
私も、毎日何かしら「やってしまった…」「また失敗した」の繰り返し。
毎日凹んでいたらきっととてもつらい。
「あはははは…」くらいの笑って流せる余裕を持ちたいものです。
「象が卵うまないことくらい、早く気づけばよかったよねー」と言いながら、
「せっかく作ったこの大きいフライパン、何か使えないかな?」と次のことを考える。
「大きいフライパンは大きいたまごやき作りにしか使えないからもう意味なし!」ではなくて、
何か全然別のおもしろいアイデアを練ってみる。
このようにして、失敗から学ぶ。
やってみないと失敗もできない。
たぶんそういうことかな、と思います。
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『臨床心理士と可愛い絵本』いかがでしたか?
第7回目 お付き合いいただき ありがとうございます。
同じ絵本であっても、感じ方は多様です。
同じ人が同じ絵本を読んでも、
その時の体調や気分によって
感じ方や気になるところが変わることもあります。
あなたが【 ぞうのたまごのたまごやき 】を読んだ時
どう感じ、どんなことを考え、
どんなメッセージを受けとったか、
きかせていただけましたら嬉しく思います♪
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大阪駅・梅田駅徒歩10分、地下鉄中津駅すぐ
大阪中津臨床心理カウンセリング
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