臨床心理士と可愛い絵本②
【へんしんトンネル】
『臨床心理士と可愛い絵本』と題して、
シリーズでお送りします(更新は気ままに〜です)。
幼い頃に好きだった絵本を
大人になった今あらためて手にした時、
そこには深くて広くて大きなメッセージがあるように感じました。
“大人になったから” だけでなく
“臨床心理士として” の視点も増えた私が、
一冊の可愛い絵本に想いを寄せて、語ります。
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第二回目にご紹介するのは
【へんしんトンネル】
(あきやまただし:作絵 金の星社)
〈あらすじ〉
あるところに、ふしぎなトンネルがありました。
そのトンネルを通ると、変身!してしまうのです。
例えば、
河童が「かっぱ、かっぱ、かっぱ」と言いながらトンネルと通ると・・・
トンネルから出てきたのは、
あら、ふしぎ!「ぱっか、ぱっか、ぱっか」と馬でした。
他にも、
ロボットが「ロボ、ロボ、ロボ」と言いながらトンネルと通ると・・・
あら、ふしぎ!「ボロ、ボロ、ボロ」とボロボロになって出てきました。
このトンネルは、
通ると変身してしまう とっても不思議なトンネルなのです。
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この可愛い絵本を読んで、
私は、こんなことを考えました。
(1)トンネルの中では葛藤している
トンネルは、暗くて長い、という特徴があります。
同時に、歩き続けたらいつか光が差してくる、という特徴もあります。
河童はトンネルに入ってしばらくは
暗くて、怖くて、先が見えなくて、
不安でたまらなかったのではないかと思います。
どうにか自分でこの苦しさを乗り越えようと悩んで、
ああでもない、こうでもない、と考えあぐねて、
もうこのままここに座り込んでしまおうか、歩き続けようか葛藤して、
自分で自分を励ましながら歩いた河童は、
次第に差し込む光に気がついて
トンネルを出てくる時「パッカ、パッカ、パッカ」と変身しているのです。
(2)葛藤して、大変身ではなく小さな変化が訪れる
トンネルの中で悩んで苦しんだ河童ですが、
その過程があったおかげで、
物事の捉え方・感じ方が変化したと考えることができます。
河童→馬 というのは大きな変化に見えますが、
「カッパ、カッパ、カッパ」が
「パッカ、パッカ、パッカ」になるのは、
どこに「、」を付けるかが変わっただけです。
ほんの少し視点が変わるだけで、
河童が馬になるくらいの変化が訪れるのです。
人間で例えるなら
車を激しくぶつけてしまい
「もう最悪だー」「修理費高すぎるー」と落ち込んだけれど、
心配してくれる人の優しさに触れたり
修理ついでに磨いてもらえて車がきれいになったり
「ありがたい出来事もあるなぁ」という視点を持つことで、
気持ちがちょっと楽になる、という変化があります。
(私の実話です・・・。運転、気をつけます。)
単にポジティブになろう!という意味ではありません。
「カッパ、カッパ、カッパ」→「パッカ、パッカ、パッカ」の変化は、
ポジティブでもネガティブでもないですね。
“ちょっと別の角度からも見えるようになる”
ということが大事なのではないかと思います。
(3)ユーモアがあると「きいてみようかな」と思える
この絵本から私は上記のようなことを考えたわけですが、
こうして文字にすると、
なんとも堅苦しい絵本のように見えるかもしれません。
でも、可愛らしい絵でユーモアたっぷりに描かれた本です。
おそらく作者は、純粋に可愛くて面白い絵本を描いたのだと思います。
私が勝手に上記のようなメッセージを感じたに過ぎません。
ここで、ふと気がつきます。
説教じみていない方が、
すんなりと心に染みてくるような気がします。
子どもの頃はもちろん、大人になっても、
誰かから説教されるのって嫌ですよね〜。私は嫌です。
逆に考えると、誰かに何かを伝えたい時、
特に少し厳しい話を伝える必要がある時、
どうすると良いか、というヒントをもらいました。
押しつけがましかったり、
一方的で攻撃的な表現をしてしまったりすると、
相手は無意識的にも拒否反応を出す可能性が高いわけです。
言っていることは正しくても、
言い方が不快だと耳を塞ぎたくなるものです。
自分で自分に対して鞭を打ってしまうタイプの方も、
自分に説教をして、自分で拒否しているかもしれません。
頭がカタイかも・・・
ユーモアなんて無縁・・・
大人が絵本なんてアホらしー!という方こそ、
ぜひ 絵本くらいの“ゆるさ” “やわらかさ” に触れてみてくださいね。
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『臨床心理士と可愛い絵本』いかがでしたか?
第二回目 お付き合いいただき ありがとうございます。
同じ絵本であっても、感じ方は多様です。
同じ人が同じ絵本を読んでも、
その時の体調や気分によって
感じ方や気になるところが変わることもあります。
あなたが【へんしんトンネル】を読んだ時
どう感じ、どんなことを考え、
どんなメッセージを受けとったか、
きかせていただけましたら嬉しく思います♪
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